プロンプトエンジニアリングの基本から文章生成のコツ・実践例を解説
プロンプトエンジニアリングによる文章生成のコツは、プロンプトの設計にあります。
プロンプトの基本知識や作成方法などを把握することで、生成AIが作成する文章の質は大きく変わるでしょう。
本記事では、質の高い文章をAIに生成してもらうためのプロンプト作成のコツや、プロンプトエンジニアリングの課題と対策などを解説します。
プロンプトエンジニアリングとは何か
本章では、プロンプトやプロンプトエンジニアリングの基本知識を解説します。
プロンプトとは
プロンプトとは、人工知能(AI)に与える指示のことです。
つまり、何をするのか、何について話すのかをAIに対して指示するための手段ですね。
質問や命令などをテキストで記載するのが一般的ですが、画像や音声などの形式を用いることもあります。
プロンプトは、より具体的な指示にした方が素早く的確な回答を得やすいとされています。
プロンプトの種類
プロンプトの主な種類は、次に挙げる3つです。
- 情報提供型プロンプト
- 創造性を促すプロンプト
- インタラクティブ型プロンプト
情報提供型プロンプトは生成AIに対し、データの分析や特定のトピックへの質問など、特定の情報の提供を指示する際のプロンプトです。
創造性を促すプロンプトは生成AIに創造的なコンテンツ制作を指示するためのプロンプトです。文章生成はもちろん、画像や音楽などの生成を行います。
インタラクティブ型プロンプトはAIに対話や会話をさせるためのプロンプトです。質問に対する応答やチャットボットとの会話に適しています。
プロンプトを構成する4つの要素
本章では、プロンプトの4つの構成要素について解説します。
1.Instruction(命令・指示)
命令・指示は、生成AIにしてほしいことを伝えるための要素です。
命令・指示の要素を含むプロンプトを設計すれば、生成AIから回答を得ることができます。
主な例は、「文章を作成して」「要約して」「データを分析して」などです。
ただし、命令・指示の要素だけでは生成AIから望む回答は得られません。
意図したとおりの回答を得るためには、より明確で具体性のある指示を出すことが重要です。
2.Context(背景・文脈)
背景・文脈は、生成AIの回答の質を高めるための追加情報です。
背景・文脈に関する情報を生成AIに伝えることで、回答内容の精度を高められます。
例えば、「中学生にも分かる内容にしてください」「500文字以内で記載してください」などが挙げられます。
3.Input Data(入力データ)
入力データは、生成AIに処理または分析をさせる上で必要な情報を指します。
入力データを含むプロンプトを設計すれば、与えた情報が反映された回答を得られるでしょう。
主な例は回答してほしい質問や条件、回答に盛り込んでほしい情報やデータなどです。
4.Output Indicator(出力形式の指定)
出力形式の指定は、生成AIに具体的な回答方法を指示するための要素です。
出力形式が指定されていないプロンプトを設計した場合、文章を羅列しただけの回答になり読みづらくなります。
出力形式を指定する際は、「箇条書きで記載してください」「表形式で回答してください」などの指示を伝えましょう。
プロンプトエンジニアリングとは
プロンプトエンジニアリングとは、プロンプトを設計したり、プロンプトを最適化したりすることです。
最適化された指示を出せば、意図したとおりの回答結果を引き出すことができます。
プロンプトエンジニアリングでは、効率的なプロンプトを作成することが不可欠です。
とくに、複雑なタスクを実行させる場合は、文脈や前提条件を具体的かつ明確に伝える必要があります。
プロンプトエンジニアリングの重要性
プロンプトエンジニアリングの目的は、ユーザーが求める結果を生成AIに回答させることにあります。
最適化したプロンプトを設計できれば、次に挙げるメリットを得ることができます。
- 生成AIの効率化
- さまざまなタスクに対し、柔軟に対応できるようになる
- 生成AIを制御し、ユーザーにとって不適切なコンテンツの生成を防止できる
- ユーザーが望む回答や提案を得られる
上記のメリットからも分かるとおり、プロンプトエンジニアリングは生成AIに最適な指示を出すために欠かせない技術です。
プロンプトが結果に与える影響
プロンプトエンジニアリングは、AI技術の発展によってその重要性が増しています。
AIの精度の向上と効率化を図る上でプロンプトエンジニアリングは欠かせません。
プロンプトの内容次第では、生成AIから得られる回答結果の精度が大きく変わります。
曖昧なプロンプトを設計すれば、生成AIの能力を最大限まで引き出せません。
一方で、最適化されたプロンプトを作成できれば、生成AIによる回答内容の精度が向上するだけでなく、不適切な回答を減らせます。
プロンプトエンジニアリングの具体的な手順と文章生成のコツ
本章では、プロンプトエンジニアリングの作成手順と文章生成のコツを解説します。
具体的な手順は以下の4つに分けられます。
- プロンプトを作成する目的を明確にする
- 具体的な指示内容を考える
- 構造化を意識してプロンプトを作成する
- プロンプトの内容を調整し、回答の精度を高める
1.プロンプトを作成する目的を明確にする
まずは、作成したいコンテンツの内容に合わせてプロンプトを作成する目的を考えます。
目的を明確にすることで、一貫性のある回答結果を得やすくします。
目的の例は「望む回答結果を得たい」「画像を生成したい」「文章を生成したい」などです。
2.具体的な指示内容を考える
次に、主語や目的語、数値などを使用して具体的な条件を加えていきます。
ただし、長文または条件が多いなど、複雑なプロンプトは生成AIが指示内容を正確に理解できなくなる恐れがあります。
プロンプトの内容を考える際は、生成AIが理解しやすいように簡潔にまとめましょう。
3.構造化を意識してプロンプトを作成する
プロンプトを構造化することで、生成AIの回答精度がさらに高まります。
例えば、見出しを設定する際に「#」や、マークダウン記法の「*」を使用するとよいでしょう。
また、プロンプトのテンプレートを活用するのも手です。
4.プロンプトの内容を調整し、回答の精度を高める
生成AIから望む回答を得られなかった場合は、プロンプトの内容を調整して回答の精度を高めていきます。
ただし、最初から複雑なプロンプトを設計すると生成AIが正確に理解できない恐れがあります。
まずはシンプルな命令・指示を出し、その上で具体例や追加情報、形式の指定などを付け足していきましょう。
プロンプトエンジニアリングの文章生成のコツ1.具体的かつ明確な指示を出す
生成AIに精度の高い回答を求めるコツは、具体的で明確な指示を出すことです。
生成AIが回答を出す上で必要な情報を簡潔にまとめることができれば、AIは指示内容を理解し、素早く回答結果を出してくれます。
プロンプトを設計する際は、曖昧な表現を控えましょう。以下のNG例とOK例をご覧ください。
NG例:プロンプトについて教えて
OK例:プロンプトを作成するメリットとデメリットについて文章を作成してください
NG例ではプロンプトの何について知りたいのかを絞り込めておらず、的外れな回答を得る可能性があります。
一方のOK例は「プロンプトを作成するメリットとデメリットを知りたい」という明確な指示で得たい回答を絞り込めています。
プロンプトエンジニアリングの文章生成のコツ2.出力形式やその範囲を指定する
プロンプトエンジニアリングの文章生成のコツは、生成AIに回答結果の出力形式や範囲を指定することです。
出力形式を指定した方が、より内容を絞り込んだ回答結果を得やすくなります。
主な出力形式は、回答文字数の制限や文末表現の種類などです。
例えば、「300文字以内」「ですます調 or である調」「テキスト形式 or 表形式」などが挙げられます。
プロンプトエンジニアリングの文章生成のコツ3.背景や補足情報を加える
プロンプトエンジニアリングの文章生成では、背景や補足情報を付け足すことも望ましい回答結果を得るためのコツです。
回答がほしい理由、誰の立場での回答がほしいのか、対象が誰かなど、背景や補足情報を加えることで、生成AIの回答結果の精度を高められます。
背景や補足情報の例として、タイトルや執筆者の立場(Webライター歴10年の男性)、読者に関する情報(年齢・性別・職業)などが挙げられます。
プロンプトエンジニアリングの実践例
本章では、プロンプトエンジニアリングの実践例を紹介します。
1.文章生成
プロンプトエンジニアリングは、特定のスタイルやトーンを指定した文章生成を行えます。
論文のような長文の生成から広告のコピー、SNSの投稿などまで幅広く対応できます。
特定のスタイルやトーンによる文章生成だけでなく、創造的な文章生成も可能です。
例えば、ChatGPTでは小説や詩を作成するために必要な学習をさせており、人間の作家と共同で作品を制作するプロジェクトが始まっています。
2.翻訳
プロンプトエンジニアリングは、生成AIに多言語への対応を促せます。
プロンプトの内容次第で翻訳の精度を向上させられる上に、その言語圏の文化的なニュアンスも取り入れた自然言語に近い翻訳も可能です。
実際にビジネス文書の翻訳や、AIと人間の翻訳者によって運営されるハイブリッド翻訳サービスが提供されています。
3.画像生成
プロンプトエンジニアリングは、生成AIに高品質の画像生成を促すこともできます。
実在しない景色や抽象的な情報を画像として視覚化したり、既存の画像を新しいスタイルに変換したりすることも可能です。
生成できるのは写真だけでなく、イラストやアート作品、オリジナルのキャラクターなどの生成にも対応しています。
4.動画生成
プロンプトエンジニアリングは、効率的な動画の生成や編集も可能にします。
プロンプトの内容次第では動画の編集やエフェクトの追加、アニメーションの生成などのタスクを自動化することも可能です。
実際に、動画の背景を除去する、スタイルを変換する、人間の動きを再現したアニメーションを生成するなどに活用されています。
5.音楽生成
プロンプトエンジニアリングは作曲や編曲、BGMの生成など、音楽制作の自動化に役立てることができます。
プロンプトの設定次第ではポップスから演歌などまで、さまざまなジャンルの音楽を生成することも可能です。
実際に、映画やゲームのBGMを制作する現場でも活躍しています。
6.ゲーム開発・教育
プロンプトエンジニアリングは、ゲーム開発の現場でも活用されています。
例えば、ゲームのキャラクターの生成やステージの自動生成などです。
他には、教育分野でもプロンプトエンジニアリングが活躍しています。
具体的には、AIを活用した語学学習アプリや学習プランのパーソナライズ化、リアルタイムでのフィードバックの提供などが挙げられます。
7.コード生成
プロンプトエンジニアリングは、プログラミングのコード生成を促すことも可能です。
生成AIに自然言語で指示を出すだけで、さまざまなプログラミング言語のコードを生成できます。
コード生成できるAIを利用し、最適化されたプロンプトを設定すればプログラマーの生産性を向上させることもできます。
プロンプトエンジニアリングの課題と対策
本章では、プロンプトエンジニアリングにおける課題と対策を解説します。
生成された内容に偏りがある
プロンプトエンジニアリングの主な課題は、生成AIの回答結果に一貫性が見られないことです。
プロンプトの内容が不十分な場合、生成AIは質問や指示を間違えて解釈し、誤った回答を提示する可能性があります。
また、生成AIのモデルは学習している情報やデータが異なるため、同じプロンプトを設定してもモデルによって異なる回答になります。
対策
具体的な対策は、モデルの特性や対応できる範囲を良く理解することです。
生成AIは万能ではなく、得意不得意やパフォーマンスの限界があります。
誤った回答結果を引き起こすリスクを軽減するためには、最適化したプロンプトを設計することが重要です。
モデルの特性やパフォーマンスの限界を理解した上で、それを補うためにプロンプトの内容を工夫しましょう。
プライバシー保護やセキュリティへの配慮が必要
生成AIが生成した文章でも、プロンプトの設計段階からプライバシーやセキュリティへの配慮が必要なことも課題です。
個人情報や機密情報などを含むプロンプトを設計すれば、生成された文章に反映される恐れがあります。
また、セキュリティ対策を怠れば、内部情報の漏洩や改ざんなどのリスクが高まります。
対策
プライバシー対策としては、プロンプトに個人情報や機密データを含めないようにします。
プライバシー侵害の恐れがある情報については、個人や組織を特定できないように匿名化するのも手です。
また、セキュリティ対策はセキュリティに配慮されたプロンプトテンプレートを使用したり、生成AIと互換性があるプロンプトテンプレートを実装したりするとよいでしょう。
プロンプトインジェクションのリスクがある
プロンプトインジェクションの主な原因は、生成AIがプロンプトの設計内容に基づいて出力するという基本的な仕組みの悪用です。
プロンプトインジェクションとは、望ましくない回答結果が生成AIから提示される問題のこと
特定のキーワードやフレーズを入力すると、生成AIが不適切な回答を生成することがあります。
対策
プロンプトインジェクションへの対策は、入力プロンプトに対して厳格なフィルタリングを設定することと、検証メカニズムを導入することです。
不適切な回答を生成するリスクのあるキーワードやフレーズを制限することで不適切な表現を排除した回答結果が得られます。
ただし、過剰な制限は表現の自由や創造性を阻害する要因になりかねません。
それぞれのバランスを考慮したアプローチが求められます。
まとめ
プロンプトエンジニアリングは生成AIを効率的に活用し、意図したとおりの回答を得るために必要な技術です。
生成AIに意図したとおりの回答を求めるには、具体的かつ明確な内容のプロンプトを設計する必要があります。
より精度の高い回答結果を得たい場合は、プロンプトの調整を繰り返し行いましょう。